脳科学的教育のコラム

教育とは「魚をあげる」ではなくて、「魚の取り方を教えること」に似ています。

脳って不思議?

脳の働きを知って学習するとその効果が何倍にもなるのです。

そしてその特性には個人差があるのです。だからそれぞれの学習法をみつけなくてはいけない。早く確立させなくてはいけない。


児脳科学をベースとした研究の、子育てと関係する事柄の一部です。

文科省の指導要領に基づく学習進度は、5段階通知表で言えば3で子供が付いてくれればよしとするペースのものです。でも、優秀なポテンシャルを持った子供たちにとっては、敏感期を逸するものであり、もったいないことなのです。

子供教室では、おおよその子供が指導要領に基づいた「知識」教育については、小3時までに修了させることが十分可能であると確認しております。

この間には同時に知恵(概念)を発達させることも可能です。

生まれて最初に発語するのは、「なに?」の質問であり、その後の成長で「なんで?」の質問が出てくることでもお分かりになると思います。

IQに対してCQ(感情指数)と言うのがありますが、この間の人間力養成も非常に重要と考えます。

先行学習をしておいて、余裕の時間にさまざまな体験を通して知力を高め、有益な人間関係も築いていけるわけですから。これが本当のゆとり教育なのでしょう。

 

1.   人の脳の素晴らしさ。

「あいまいさ」こそ、人の脳の素晴らしさです。人の持ちきれない膨大な量のデータから緻密検索を行うコンピュータはすばらしいのですが、人のように概念でのあいまい検索は出来ません。地球70億人の顔を見て「たった一人の大切な人」を探す能力も、人の脳が上なのです。

 

2.   概念

「あいまいさ」は、普段良い意味に使われることが少ないです。しかし地球一つをとっても、ある時には完全な球だと考え、ある時には標高8000mの山々のでこぼこも考えたことで科学も進歩しました。コンピュータは未だ「なんと頭の固いやつ」ということになります。

 

3.論理

 人の中の基礎論理とは即ち概念の積み重ねの事であります。勿論言語を持ったことで人は更に高次の思考を行い、他人とのコミュニケーションが行えるようになったのですが。「何となく納得のいかない瞬間」を持つのは概念が言語化できないものであるからでしょう。

 

4遊び

厳密さは大切なものですが、ものには「遊び」も必要です。

車を運転で「「ハンドルの遊び」という言葉が使われますが、この遊びがなくては運転する人の肩も凝りますし、安全運転も出来ません。人生もそうです。

子育てもそうです。「学習と遊びは一つのもの」との考え方が必要です。小児にとって遊びは学習であり、遊びは学習なのだから。考えるべきはその質にあります。

 

5.おもちゃ、ゲーム等の質

 一言で言うと、おもちゃはよりシンプルなものが良いです。例えば与えられた遊び方しか遊べないおもちゃは頭を鍛えません。「与えられたおもちゃで、与えられた遊びしか出来ない事」が問題だと言う事です。 要するに小児にとって遊べるものは全ておもちゃなのですから。

 

6生理学的に見る.知能

 知能についての定義は難しいですが、知能とは生理学には記憶の事です。勿論これは「丸暗記」の類を意味するものではありません。知能の因子を「記憶」と「思考」に分けて考えると、思考とは記憶に基づいて行われる応用作業の事です。

 

7.記憶の大別

 記憶の分類の一つとして、「抽象記憶」と「具象記憶」の2分の法があります。抽象記憶とは具体的な数値の記入されていない公式のようなもので、物事の関係を表す。関係式のようなもので言語で表すことの困難な概念の事なのです。

 

8.人間力。人との間合い

 武道では重要な間合いですが、間合いは人間社会でも非常に重要な事です。「空気読めない」も結局はこの不理解の事です。

 日本には「手切り」の習慣があります。人ごみを分けて通る時に「ごめんなさい」「ごめんなさい」と左右に手刀を振り、「これ以上あなたの領域を侵しません」と意思表示するものです。

 本能的な安全スペースがあるのですが、それは育ち方によって様々です。

「鮎の共釣り」と言う釣り方がありますが、針の付いた囮を送り込み、安全スペースを守ろうと撃退する鮎を引っ掛ける釣りです。

そこに不思議な現象があります。川に1匹あたりの安全スペースを確保できないほどの多量な鮎を放流すると鮎はテリトリーを守ろうとしなくなるのです。「あきらめちゃった」です。

蛇足ついでに。最近少なくなった夜行列車での旅で、向かい合わせの席に誰かが乗り合わせた時に、人は「自分に危害を与える人間ではないか?」と観察します。相手もそうでしょう。そして話しかけて見たくも思ったりもします。これは本能です。でも、ほぼ30秒以内に話しかけなければ、その後ずーっとそのままで終わります。これは実験的な話です。

これは小児教育についても言えます。30秒以内にすーっと「危険のない人です」と小児の間合いに入らなければいけません。そうしないと、その後がうまくいきません。非常に難しい事でもありますが重要なファクターです。これは技術と呼んでいいのかどうかは疑問ですが。

 

9.中断課題解説法

 水戸黄門のように1話完結の「ああ、すっきりした。」型と、毎週連続型のドラマがありますが、子供たちが自分の学習方法を確立するまでは、中断課題解説法を用いた連続ドラマ型が効果的です。子供のモチベーション維持に繋がるからです。話を盛り上げて、盛り上げて、そこで「すぱっ」と切ってしまい、次回学習までに「次はどうなるの?」と考えさせるのです。

 

 

 

10.「たとえ話」

 自分の主張を他人に伝える時には、言語への変換が必要ですが、概念となるとかなり困難です。その時に活躍するのが「たとえ話」です。アインシュタインの論理実験も「もし?・・」と、のたとえ話が分かりやすいのです。相対性理論だってそうです。

例えば「提灯と釣鐘」と言えば概念が伝わります。「もしあなたがこうされたら?」の話もそうです。算数で「金魚が3匹、そこに5匹入れると・」の問題も、当然金魚の数を覚えるためのものではなくて、足すと言う概念を育てるためのたとえ話です。教育には、上手な適切なたとえ話が伝える側には必要だと言う事です。と言いながらここでもたとえ話をしていますが。

 

11.仮定法

 「もしこうなら・こうなるはずだ・」と考えるのが近代科学的アプローチの第一歩です。次に安

全かつ合理的な実験でその仮説を証明する。日常生活でも重要な考えかたです。この仮定をし

て自分の行動を判断するという能力が欠落する事で危険回避が出来るのですから。問題解決に

も必要な仮定と論理です。

 

12. 最初は5割を目指す目標設定

 試験の作成者は、その及第点をおおよそ6割と意識して製作します。受験者も「78割を」と目標設定する事が多いようですが。

 でも、指導経験からは、最初から高めに目標を設定するよりも、最初は5割程度に目標を設定するのがいいようです。

 最終目標を大学受験とするなら、それまでの試験は「不理解を発見するための手段。」と考えるべきです。偶然の100点よりも、「早めに弱点が見つかった。ラッキー。」と考えるべきです。

 10割の目標を掲げて、2ヶ月で煮詰まって完成度2割で挫折などと言う学習者をよく見かけのですが、それなら最初から2ヶ月で5割を目指すのがいい。 気楽さやモチベーションの関係です。

 ストラックアウトという、正方形のプレートが3×39つの小正方形に分けられている的にボールを投げ当てるゲームがあります。小正方形には上の列に1.2.32段目に4.5.63段目に7.8.9と数字が振ってあり、それを打ち抜きます。解説者は「あと一つだけ。」とか言いますが、最後に当てる的は、最初に当てた的の、的の面積の9分の1の面積の難易度。

学習もこれに似ています。30点取るのと90点取るのでは9倍の努力が必要な事になる。

(厳密には違いますが)

 

13.本の考え方

 「本を大切にする」のはよい事です。本がなかったら全ての学問が、どれも今のレベルに達してはいません。本があることで、先人の考えた事を知り、その続きを考えると言う風に、学問は積みあがってきたのですから。

そんな大切な本を「汚せ」とは言いません。でも読書は本との会話だと考えましょう。受動的姿勢一辺倒にせずに、鉛筆を持って、自分の言いたい事を書き込んで自分だけの本を作ると言うのは、本、本来の目的には合致します。

本と会話しながら能動的に能力を高められるからです。ノートを使用して同じ事が出来ないかとも考えて実験もやりましたが、「こんな事が書いてあったところに、こんな風に書き込んだ」と言う記憶が学習効果を何倍にも高めています。

物を大切にすると言う気持ちは大切ですが、物を最大限に役立てると言う姿勢も大切です。「本は本棚に飾るものではなくて、自分の脳の中に残すものなのですから。」

 

14.自分との会話

 思考の多くは自分の脳との会話だと話しましたが、ここでは時差のある自分との会話について

話します。

例えば「1週間先の自分へのノート」です。これは自己の「思考整理」と「学習記憶確認」が目的ですが、1週間と言った期間については個人差があります。個々の中期記憶滞留時間によって異なるのです。

このノートには1週間後に覚えていて欲しい学習事項を、「自分が自分出すテスト」とするのと、1週間後の自分への問いかけを書いておきます。そして1週間後の自分がこれに答えます。

1週間の自分の変化が分かるのも面白いです。

 

15.辞書遊び

 これは「本との会話」に近い遊びであり、学習であると考えてください。インターネットは調べ物をするには便利ですが、自分の辞書を手短に持って自分で書きこみをする事には別の効果があります。記憶の定着の度合いがまず違うのです。また辞書は一冊あればいろんな遊びが出来る。

 

16.脳はおだてて使え

 脳に限らず体の部品が全てそうだと言えるのが、「役に立っているよ」と使ってやらなければ、アポドーシス(廃用萎縮)で使い物にならなくなってしまう。逆におだてて使えば老化はあっても代替や再生の形で役に立ってくれます。

 

17.教わろう、覚えようだけでは不十分

  脳のニューロン、シナップスの回路の育て方で「楽しんで考える」ということが大きなポイン

トとなります。教わろう、覚えようだけでは不十分なのです。

 

18.記憶の3段階 寝起きの頭を活用しろ

  これは学習時間との関係によって効果が異なってきます。記憶は短期記憶(電気記憶)、中期記憶(ホルモン記憶)長期記憶(タンパク記憶)と考えるのが分かりやすいでしょう。

このあたりになると、文字に書いてお伝えするのがかなり難しい。ただ一般的には夜3時間勉強するのと、夜2時間勉強して、朝早く起きて1時間昨夜の学習を思い出す訓練をしていくと、記憶の定着率がかなり高くなるのです。そして海馬の働きの記憶喚起訓練にもなる。朝の思い出し訓練。最初は昨夜の2時間分思い出すのに2時間かかる。でも慣れてくると30分でも行える。

個体差があるので、一概には申せませんが、個体差があるので一度ご相談ください。

 

19.記憶喚起。大切なことだけを覚えるのではない。キーワード学習。

 記憶は畑に埋まっているジャガイモやサツマイモやサトイモと同じ。イモだけ覚えても畑を片っ端から掘りかえさなくてはいけない。葉っぱと言うキ―ワードを覚えていれば、その葉っぱを覚えていればずるずると引き出せる。記憶喚起のキ―ワードを自分なりに工夫すること。自分なりの学習方法を早く確立することも重要ですね。

 

20.「学んで、そして忘れた時に残っているものが学習の成果だ。」

 これはアインシュタインの言葉ですが、残ったものが概念と言うことです。

 

21.消しゴムは使うな

 KISの指導の基本です。自分が一度落ちた落とし穴をまた、上にふたをしてかくしてまた落ちてしまう。落とし穴は消しゴムで消して綺麗なノートを作るためのものではないので。

 

まだいろいろお伝えしたいのですが、今回はここで。・・KIS科学研究所